芭蕉布物語
柳宗悦とその同人一行は、昭和13年から15年にかけて4回にわたって来琉し、琉球における民藝の美を求めて各地を踏査した。その成果は幾つもの書籍として発表され、琉球の文化や伝統工藝を広く世に知らしめることとなった。『琉球の陶器』『琉球の文化』『琉球の織物』『琉球の型附』などである。『芭蕉布物語』もその中の一冊で、昭和17年に私家版、限定225部として刊行された、B5変型の漆染め和紙装の美しい本である。本書の奥附にはこう記されている。猥(みだり)に復刻すべきに非ず。こういうこともあって本書は全集等は別として復刻・再版されることもなく今日に至っている。しかし、『芭蕉布物語』が沖縄の戦後の伝統工芸、とりわけ芭蕉布の復興に果した役割は極めて大きいものがある。1974年に人間国宝に指定された喜如嘉の芭蕉布の平良敏子さんは、『芭蕉布物語』を読むことによって故郷の織物の美を再認識し、復興への決意を固めたという。戦後の荒廃の中での苦闘を支えたのは、柳宗悦による芭蕉布への賛歌だったのである。本書の復刻・再版にあたっては原著のイメージを出来るだけ損なうことのないよう、印刷から紙、表紙に至るまで細かな配慮をした。解題は、この間、柳宗悦と民藝運動に関して、積極的に論を展開している松井健(東京大学名誉教授)先生にお願いし、ほぼ本文と同分量の濃密なものとなった。老齢化や過疎化、文化意識の変化等で伝統工藝はどこでも大きな危機にある。本書はその様な危機を乗り越えていくことへのエールとなろう。芭蕉布の美しさを再認識し、いつまでも残していく為に・・・。
販売ページ著者 | 柳 宗悦 |
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発行日 | 2016 年 9 月 |
発行 | 榕樹書林 |