出版人列伝
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#05

デザイナー
宜壽次美智(ぎすじみち)さん

本への想い

「紙の媒体は特に無くしてはいけないと思います。紙を綴じてある本という存在、パッケージを手に取って見るということ、店頭で購入し持って帰るということが大事だと感じます。自分で自分のものにしていく形は必要で、本という存在は失くしてはいけない。紙で目にして視覚で入ってくるのは大事だなと思っています」。

インタビューでは、互いが生まれ育った懐かしい那覇の話に花が咲いた。かつてあった書店や古書店、文具店、何気ない看板や街の賑わい。時代の流れに伴い姿を消す見慣れた沖縄の風景を、絵本にして残し伝えたいという夢と目標を聞かせてくれた。

「イラストで伝わることは写真とも違うものがあります。子どもたちが目にするイラストは、デジタルではなく本として目に入るものに力があると思います」。

宜壽次さんは以前にも『かーらやーさんとガジュマルくん』(作・絵:ぎすじみち)という優しくてぬくもりのあるファンタジー絵本を制作している。きっと楽しい絵本を作ってくれるだろう。

これから

宜壽次さんは様々な描き方、表現技法をデザインに取り入れている。

「新しい表現で沖縄を魅せるというテーマがあります。いろんな描き方や表現、デザイン、レイアウトで装丁の中のイラストを研究していきたいですね」。

個人の創作活動としては、撮り溜めてきた街の風景写真を冊子にしたいと話す。宜壽次さんの目に映る何気ない沖縄からもきっと、街の遷り変わりを垣間見ることができるだろう。沖縄本の仕事とは今後も積極的に関わっていきたい、楽しいことをやっていきたいと力強い声を聞かせてくれた。

宜壽次さんのデザインと装丁が本を彩り、書店も彩る。見ていたい風景であり、溶け込んでいたいと思う。

これからの活動が楽しみだ。

インタビュアー 我那覇祥子