出版人列伝
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#04

フリー編集者
宮城一春さん

宮城一春さん(フリー編集者・沖縄出版協会事務局)
宮城一春さん(フリー編集者・沖縄出版協会事務局)

~本と共に生きる~

編集者、ライター、沖縄本ソムリエ、図書館協議委員等々、様々な顔を見せる宮城一春氏(1961年3月生まれ、60才)。

編集者として入社したのが沖縄時事出版(1983年)。「先輩として徳元英隆(現沖縄文化社社長)さんがいて、同僚には呉屋(現編集部長)さんがいました。残業が多くて忙しかったとの記憶があります。それでも仕事は面白かった」。主に教材出版を手がけていた時事出版で、国語ノートや家庭科ノート等の教材を編集しながら、『おきなわの理科』や『わかりやすい郷土の文学』、『わたしたちのくらし』等の企画物を発刊。「教材編集という仕事柄、分かりやすい表現や書体、レイアウトには人一倍、気を遣っていました」と語る。

入社して7年目、社の方針に疑問を感じていた時期、執筆者の一人に書店を開くから一緒にやらないかと声をかけられ退社。「もともと本が好きで、本に囲まれながら仕事がしたいと思っていましたので渡りに船との思いで転職しました。また、教材ではなく一般書籍を編集したいとの思いもあり、書店で流通を学び、直に読者と接してみたいと考えました」。しかし、一年後、広告代理店に勤めていたかつての先輩から、「出版部を創設するので来ないか」との誘いを受け転職。書店営業をするかたわら書籍編集の仕事をこなし、『まんが沖縄史の五人』や『まんが組踊と沖縄芝居』、『復帰世20年』等の書籍を編集。「初めての一般書籍、書店営業という仕事だったので戸惑いもありましたが、楽しい毎日でした」。

しかし、同社が出版部からの撤退を決めたため、付き合いのあった古書店から誘いを受け転職。「編集者として『山原船水運の展開』などを担当しました。同古書店が一種のサロン的な世界を構築していたため、研究者や同業者、詩人、作家などとのお付き合いが始まったのもこのころです」。宮城氏の幅広い人脈作りは、その後の編集者人生に生かされることになる。

しかし、同古書店も業績が上がらず出版部門を閉鎖。その後も、入社した会社が出版部門の縮小や閉鎖となり転職が続く。「幸運なのは、そうした状況の中でも、うちに来ないかと声をかけてくれる方がいたことですね」と、明るく語る。老舗出版社の沖縄出版では、『沖縄の素材を生かした自由研究』、『よみがえる戦前の沖縄』、『新・おきなわ昔ばなし1・2』などの編集に携わる。文進印刷では、自分史や字誌、記念誌などを手掛けた。「年間10本以上の編集をしていたので、とにかく忙しかったですね。それでも、次第に一般書籍を作りたいという欲望が芽生えてきました」。一般書籍を手がけるために入社したのがフォレスト。「特に印象に残っているのは『沖縄戦の全女子学徒隊』や『しょうたとがじまる』。これまで夢だった、沖縄タイムスの出版文化賞をこの2冊が受賞しました。嬉しかったですね」。その他にも書籍や字誌の編集を手掛けてきた宮城氏だったが、2011年に同社を辞めフリーの編集者となる。