出版人列伝
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#04

フリー編集者
宮城一春さん

宮城氏を語るうえで外せないのが、県産本ネットワークの結成だ。「ボーダーインクの池宮さんや新城さんと一緒に、若手の編集者同士の交流会を開催しようということになり、知り合いの出版人に声を掛けました。最初は、14名ほどの同世代出版人が月に1回集まりを持ち、酒を酌み交わしながら編集や出版の話をしていました」。交流会を続ける中で、1994年に結成されたのが「県産本ネットワーク」。「言い出しっぺの私が初代の事務局長になりました」。同ネットワークでは、その後「県産本ニュース」の発行や「県産本フェア」を開催するなど活動の幅を広げ、「県産本」の名を世に浸透させた。宮城氏は1999年に事務局長を降りるが、その後も25年間にわたりネットワークの活動は続けられた。

本が好きだと語る宮城氏は、あらゆるジャンルの本に精通している。暇さえあれば本に目を通し、居酒屋で古酒を啜りながら本を読む姿もよく見かける。そんな宮城氏が琉球新報の年末回顧を担当したのが1995年、これまで27年間に渡り沖縄本の1年を綴ってきた。また、OCNの「あまくま歩人」では、2012年から沖縄本を紹介し続け、他にもラジオやテレビ、書評欄にて活動を続けてきた。「年間だと200冊程度は沖縄本に目を通します。それが生活の一部になっていますね」。このような活動を続けてきた宮城氏には、書評家や沖縄本ソムリエの肩書きが添えられるようになる。

フリー編集者となって最初に手がけたのが、人間国宝城間德太朗氏を扱った『絃聲一如』(2012年沖縄タイムス刊)。その年から沖縄時事出版からの依頼を受け、ライター・編集者として活動。編集者として、そして沖縄本を紹介し続けてきた宮城氏にとっての一番の強みは人脈、そして情報量だと感じる。時事出版では、宮城氏の人脈と情報量を元に新しい分野にも活路を見いだした。県や那覇市、豊見城市のしまくとぅば読本の執筆・編集を手がけ、県しまくとぅば普及センターの『しまくとぅば会話集』も13冊目を制作中である。「しまくとぅばでは、各地域のお年寄りから話を聞くことから始めます。会話の中から昔の貴重な生活風景が垣間見える。楽しい時間ですね」。他にも絵本、紙芝居、副読本等の執筆を担当し、お笑い芸人本も手がけた。「フリーとなって研究者や出版人、タレントの皆様等、多くの方々に協力してもらいました。本当にありがたいと感謝しています」。