出版人列伝
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#10

南山舎
大森一也さん

大森一也さん(南山舎株式会社 出版部部長)
大森一也さん(南山舎株式会社 出版部部長)

~地域に徹した最南端の出版人~

1987年創業の南山舎は、地元の情報を掲載した『八重山手帳』、タウン情報誌の『月刊やいま』、地元の内容を中心にした「やいま文庫」シリーズ等で知られる八重山に特化した出版社である。また、フリーペーパー『やえやまなび』を刊行しており、2016年にはこのような出版・文化活動の功績が認められ「琉球新報活動賞」を受賞している。この日本最南端の版元の出版部部長を務めるのが大森一也氏である。

大森氏は北国の秋田県出身である。八重山移住の目的は、「自然が身近にありながら開放的な地域で暮らしたかったこと、写真が好きで南島の作品的な写真を撮りたいと思っていたこと」の両方であったという。南山舎への入社は、移住後に石垣市教育委員会の臨時職員や地元新聞社で記者として勤めた後、創業者・上江洲儀正氏に誘っていただいたことによる。「大学卒業後は、東京の自然保護団体の職員として編集・出版部門を担当していたので、なにがしかのお役に立てるのではないかとの思いから、ありがたくお受けしました」と懐かしそうに振り返った。 

八重山での出版活動については、「地域にこだわった本づくりをしているので人物にしろ歴史や文化にしろ、自分が暮らす地域だけに愛着がもて、その奥深さに気付かされる」のがローカル出版の面白さなのではと語る。苦労することはとの問いかけには、「資金面ですね。出版不況に加えて島内は小さなマーケットですし、冲縄本島内で流通させることも海を隔てているので他社のように直接自力ではできません。全国規模のマーケットで太刀打ちできるような本となるととてもハードルが高くなります」と離島ならではの問題点をあげた。また、ちょっと変わった角度から、八重山諸島は島ごとに方言が異なるので、編集上、方言表記に関しては他地域にない難しさがあるかもしれないとのことであった。