出版人列伝
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#06

むぎ社
座間味香深さん

そんな中、むぎ社に大きな好機が訪れる。『絵でみる御願365日』が、「第2回 この沖縄本がスゴい!」を受賞したことだ。この賞を簡単に説明すると、県内の書店関係者が、今一番売りたい本、おススメしたい本を選ぶというもの。「本書は、ロングセラーとして、それまでも売れ続けていた本なのですが、賞を受賞したとたん、考えられないほど売れ行きが伸びました」。なんと二か月で5000冊売れたというから、この賞の影響力は想像以上のものがある。もともと人気があった本ではあったが、その後も順調に売上げを伸ばし、版を重ねる。「単純に嬉しかったです。でも、そんなに売れるとは想像もしなかったですね。新聞やテレビで流れたとたん、電話が鳴りっぱなしの状態でしたから…」と語る香深氏の表情からは、2代目としての安堵感が垣間見えた。「本が売れたのも嬉しいのですが、それ以上に会社の認知度が増したことで他の出版物にも影響がでたことが大きかったですね」。

現在の香深氏が見据えているのは、むぎ社のこれから。「半分は既存の本を改訂していきたいと考えています。欲しいという読者からの要望もありますが、データが古くなったり、内容自体が古くなったりした本もありますから、そのまま発刊することはできません」。そして、現在手掛けているのが『親と子のための 沖縄古典文学』。「改訂復刻版として刊行することを考えています。他の本も手を入れながら刊行していきたいですね」と語る。また香深氏自身による新企画本も進行中とのこと。

沖縄出版協会についても聞いてみた。「他社の方と共同でイベントなどの仕事をする機会がなかったので、キャリアの少ない私にとっては非常に勉強になる場です。お誘いいただいて感謝しています」と明るく語る。

「これからは、これまで父が作ってきた本も大事にしながら、新しい自分なりの視点で本づくりをしていきたいですね。自分と同年代の心を掴むような本も作ってみたい」とも。

偉大な父・栄議氏の存在が大きいことは確かだが、その存在を大切にしながら、自らの道を歩み始めた香深氏&むぎ社。これからどのような書を編んでいくのか楽しみだ。

取材・執筆 宮城一春