出版人列伝
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#12

シンカイ企画・フリーライター
真境名育恵さん

真境名育恵さん(シンカイ企画代表・フリーライター)
真境名育恵さん(シンカイ企画代表・フリーライター)

~ライター、女性、母として、強く美しくしなやかに~

フリーライターとして沖縄県内外の様々な媒体で活動を展開し、活躍する真境名育恵さん。ご自身のこれまでの活動、そして沖縄を書くことの意義や「これから」についてお聞きした。

今まで

那覇市出身の真境名さん、幼い頃は絵を描くことが好きな少女だった。「まさか自分が文章で食べていくとは思ってもいなかった」と笑顔で振り返る。

沖縄国際大学(短期学部)国文科に進学。在学中にエフエム沖縄の人気ラジオ番組「ポップンロール・ステーション」(1985年~2001年放送)に一年間、学生アルバイトとして関わる。

同番組のパーソナリティは、沖縄とアメリカにルーツを持つアメラジアンのケン&マスミ、ロバート&シェリーの人気コンビ。様々な話題にリスナーからのメッセージを織り交ぜ、日本語と英語に加えウチナーグチで軽快なトークを展開する沖縄のラジオ史に残る人気番組だった。真境名さんはリスナーからの電話リクエストを受けながら、漢字の読めないパーソナリティのために番組宛ての葉書などに振り仮名を添えるなど裏方として番組を支える。「学生でありながら番組構成会議にも参加させて頂き、当時の番組ディレクター東風平朝成氏を通して様々な経験をさせてもらいました。とにかく楽しくて、大変勉強になりました。裏方の仕事で経験したことはライターにも通ずるものがありましたね」。

ライターとして

卒業後、北谷町のタウン誌『cherry』に携わりライターとしてのキャリアをスタートさせる。当時、ハンビー飛行場が返還されて間もない北谷町を発展させようと官民で盛り上がりの機運が高まっていた。『cherry』の誌面構成は、北谷町のPRやクライアントの店舗情報、広告掲載がメイン。県外企業が沖縄へ初出店する記事や芸能人が経営する店舗のPR、クラブイベント、美容イベントのレポートなど内容は多岐に渡り誌面はとても華やかなものだった。しかし、華やかな世界を伝える日々の業務に追われ、「自身が本当に伝えたいこととは何なのか」を考え始める。

そんな中、立ち寄ったコンビニである雑誌と出会う。沖縄県内のカルチャーを題材とした『月刊Hands』。「かっこいい雑誌、いいなあと思いました。敬愛するロッキング・オン・グループ代表で編集長・渋谷陽一氏が手掛ける雑誌の空気感に近いものを感じました」。真境名さんは、『cherry』の恵まれた環境よりも『月刊Hands』に関わりたいという気持ちが強くなったと語る。「若かったんですね。給与が安定している会社より、自分がやりたいことにチャレンジしたかった」。

真境名さんが『月刊Hands』へ転職した時期は、NHK朝の連続テレビ小説「ちゅらさん」(2001年)の放送を経て、時代は空前の沖縄ブームの真っ只中。全国的にも沖縄出身のミュージシャンに注目が集まる中、沖縄のインディーズ音楽シーンに焦点を当て、わしたショップを通じ全国展開するなど県内発行の他誌とは一線を画していた。真境名さんに限らず『月刊Hands』に関わりたいと様々なクリエイターが集ったという。「2週間拘束されて5万円の給与。厳しい現場でしたけど、感度の高い人たちと関われたのは財産になりました」と、振り返る。